冷たいものを食べると歯にしみる気がした。冷たいものを噛んでいるのだから当たり前かも知れないが知覚過敏かも知れない。「知れない」という曖昧なままではいつまでたっても不安を払拭する事は出来ない。
なので歯科医院へいった。治療台に座っていると先生がやってきて「何かあったんですか?」と言う。何かあったんですかとはどう言う趣旨の質問なのだろう。聞き返すだけ無駄なので完全スルーをする。
自分がした質問などなかったかのように「今日寒くないですか?」と別の質問に移る。どうでもいいが今日は暑い。間違いなく院内の冷房が効きすぎなのだ。しかしこれもスルーする。先生の質問はまばたきと同じ、無意識。
「はい、あーん」
子供じゃないんだから「口を開けて下さい」となぜ言わないのかといつも思う。ふと先生がマスクをしていない事に気がついた。
なぜマスクをしていないのか先生に質問した。すると先生は「え? まだマスクしてるんですか? こっそり教えますね、マスク外してよくなったんですよ^^」などとニコニコしている。
屈辱。そんな事は知っている、するしないは自己判断だと知っている。自分はそんな事を聞いているんじゃない。歯科医が患者の治療を行おうとしているのに、なぜマスクをしていないのかと問うている。
もう一度聞き直す。「治療する時って必ずマスクしてますよね?」と。それを受けて先生が答える「えっとですね、マスク外す外さないは自分で決めていい事になったんですね。ご存知ない?」と。
殴りたい。
これ以上問答を続ければ殴ってしまう。
無視するしかない。
「マスク外さないんですか?」と逆に質問を受けた。自分がマスクをしたままだった事にここでようやく気がついた。歯の診察だというのにマスクを外し忘れるとは、と危うく反省しそうになる。
なぜ言わない、マスクをしたままの自分になぜ「はい、あーん」と言う、よくもまあ「まだマスクしてるんですか?」などと言えたものだ。もうストレス、冷たいものを食べていないのに歯がしみる。イライラするのでマスク外してやんない。
「花粉症なのでマスク外せないんです」と理不尽を言ってみる。「何の花粉です?」と予想外の質問が返ってきた。いつもなら冗談ですと笑いながらマスクを外すところだが今日はダメだ、イライラしてるから。先生の専売特許とも言える意味不明な言動を返してやる。
「花粉ですか? はな の こな の方です」
言ってやった。
さあ困れ、首を傾げるがいい。
期待に胸を膨らませながら先生の反応を待つ。
すると先生は あー という顔をして。
「そっちですかぁー」と深く頷いた。
どっちか知らないが完全に敗北した気がする。
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