子供と魚
- 2014/05/16
- 18:39
清らかなせせらぎのほとり、三人の子供がお互いに向かい合い、しゃがんで何かを囲んでいた。一人の子供の手には、大人の手首ほどもあろう太い枝が握られている。その子供は何の言葉を発するでもなく、枝を幾度も幾度も地面に叩きつける。それは戯れというにはあまりにも作業的で、冷たい風の渦の中に囚われているかのようだ。その様を見る二人の子供。眼には、驚き、恐れ、好奇心、揺れ動く感情から発する光が一条すら浮かんでいな...
古村翁と私 ~愛こそすべて~
- 2014/05/14
- 14:29
お昼ご飯を買おうとコンビニへ立ち寄った。突然に訪れる古村翁との再開。約2ヶ月ぶりだ。店内へ入ろうと自動ドアの前に立った時、またしてもベンチに座る古村翁と目があった。目を逸らさなければ、瞬時にそう思った。しかし脳からの指令が眼球に届くよりも古村翁の手招きのほうが早かった。見た目はよれよれなのに動きは相当俊敏だ。ここで再開したのも何かの縁と、古村翁の隣に腰を下ろす。予想通りまたしても唐突に話を始める古...
古村翁と私 ~出会い~
- 2014/05/14
- 13:52
平日の休みにやる事もなく、公園まで散歩に出かけたことがあった。平日の午前中とあって子供も主婦もいない、時間をつぶすサラリーマンがまばらにいるだけだった。一人ベンチに座り、せっかくの休みにただ公園をフラつく事しかできない自分の将来を悲観していると、どこからともなくおじいちゃんが現れ、同じベンチに腰を下ろした。おじいちゃんは茶色のバックを小脇に抱えており、バックには古村(仮名)と書かれた札が縫い付けら...
廃れた橙はただ揺らめく ~落ちのない話~
- 2014/05/14
- 12:48
東北に、とある小さな町がある。県境に近いその町には、明治の天皇陛下が巡幸された事を記念して建てられた碑が数か所残されている。交通網も満足に発達していない当時の事だから、3,4日の話ではなく、1か月を越える巡幸で、そのほとんどを鳳輦という言わば籠に乗って移動したそうだ。もちろん国家を上げての一大イベント、天皇陛下をお迎えするために、新たな組織、道路、集落まで出来たと言うのだから驚きだ。しかし残念な事...
誰かの日を考える
- 2014/05/11
- 12:23
今日は母の日だ。父の日もあるし、子供の日もある。おじいちゃん、おばあちゃんに対しては敬老感謝の日という事で一括りにされていて、気の毒というか失礼な感じがする。この際だから、それぞれにきちんとした記念日を設けたらいいんじゃないだろうか。おじいちゃんの日、おばあちゃんの日はもちろん、おじさんの日、おばさんの日、姪っ子の日、甥っ子の日、友達の日、ご近所さんの日、好きな人の日、嫌いな人の日などなど、ぜんぜ...
十字路の悪魔 ~6弦の伝説~
- 2014/05/10
- 22:50
その昔、演奏の下手なギタリストが十字路で悪魔に出会った。ギタリストは、自分の魂と引き換えに超絶的なテクニックを悪魔から与えられた。数年後、ギタリストは数々の伝説を残し、27年の生涯を終えた。ロバートジョンソンのクロスロード伝説、真偽のほどは定かではない。ところでなぜ十字路で悪魔に出会うのか、その組み合わせの謂れは何なのだろう。自宅から駅まで十字路が何か所あるのか数えてみるが、よく分からないほど沢山...
赤い傘の女
- 2014/05/08
- 14:32
ずっと欲しかった青いスポーツカーを買った。実際に運転してみると、想像していたものと少し違う。憧れが強かった分、期待が大きすぎたのか少々物足りない。しかし性能よりもスタイリングに心惹かれていたので、そんな事は全く関係なかった。そんな最高の車にあるただ一つの問題。それは走行中にもかかわらず、ハンドルがロックしてしまう事。四六時中起きるわけではないが、ごく稀にというわけでもない。今までは車の少ない直線道...