きっと誰にでも。

天寿を全うした伯父の家に行くと、近所の人たちが入れ替わり立ち替わり焼香にやってきた。伯父の家族は既に切り替えが出来ていて、時々笑いが起こるような和やかムード包まれいた。

手伝う事もないようだし、一度帰ろうかと思っていると近所の主婦と思しき女性が話しかけてきた。初対面だと言うのにグイグイ圧が凄い。受取ようかも知れないが半分強下ネタをぶち込んでくる。

心の蓋を閉めようかと準備していると「わたしいくつにみえる？」とはぁはぁしながら自分の眼球をガン見している。これは日本で2、3番目に面倒くさいやつ。答えたくはないが答えざるを得ない。

万が一にでも上を言ってはいけない。かといって下を言いすぎても角が立つという地獄の分岐路。あ、こんな時に地獄は非常識か^^ 　などと喜んでいる場合ではない。今答えを出すのだ、間違ってはいけない、やり切らなければ伯父も浮かばれない。

あ、これも不謹慎^^
よく見てみる。
ガン見は嫌なのでチラチラよく見てみる。

チラチラではよく見えないが、光速でチラチラ見ると残像が重なり合いガッチリ見えるのだ。なに書いてあんだかよく分からない看板が高速回転すると「パーマ」とか文字が浮かび上がるあの原理だ。

よしみえたっ
どう見ても五十。
おそらくは前半。

四十半ばで言っとくか？
そうすれば十歳は若い事になる。
少々言い過ぎかも知れないがまあ妥当な線だろう。

いやまてっ　はやまるなっ
苦労しているかも知れない。
もしかしたら苦労が出ちゃっているかも知れない。

様々な可能性を検討もせず性急に答えを出しては取り返しのつかない事になる。考えろ、考えるんだ。はい考えた。そこまで苦労を重ね、経験を積んだ人間がこんな半分強の下ネタを連発するだろうか。そんなはずはない。

人生の修行を積み重ねた徳の高い人物が、こんなにエロいはずがない。よし、間違いない五十だ、五十半ばで確定だ。だから十歳若く言えばいいんだ、二十歳若く言うのは角が立つ、だから・・・　　あと五歳引いとくか。ヤバいから。

「四十っス」
「四十歳にしか見えないっス」
どうすかっ！？　と心の中で問いかける。

「三十九歳なんだけど💢」
ニアピンっっ
十五歳若くいったのに足りないっっ

「すみませんでした」
かぶせ気味に謝罪しダッシュでその場を離脱した。
今後、伯父の家にはコソコソ行くしかない。

きっと誰にでも。



にほんブログ村