なぜに舞い降りた

とある廃校のグラウンドに佇んでいると、ウー言いながらレスキュー車がやってきた。レスキュー車は少し離れた路上に停車し、道路工事の警備員が使うピカピカ光る赤い棒を持った消防隊員が２人降車して辺りを警戒し始めた。

何だろうとは思ったが、それほど珍しい事でもないので特に気にせずグラウンドで佇み続ける。すると今度はどこからともなくバタバタとヘリコプターの音が聞こえてきた。妙に音が近い気がして空を見上げる。

すると、突如山の向こうからヘリが現れ急降下してくる。ほんともうすぐそこ、石を投げたらメガヒットする距離でホバリングを始めた。そしてゆっくりと降下し、廃校に併設された大きめの駐車場に着陸した。

本来なら猛ダッシュを決めるところだが、着陸したのはドクターヘリ、顔をピカピカ光らせはぁはぁ言いながら「なになになになにっっ」と走り寄るのはあまりにも不謹慎、流石に自分にもそれは分かる。

ここは良識を持って行動しなければ大人とは言えない。藪の中に身を潜め、隙間から様子を窺う事にした。やがてヘリのローターは停止したが、人が降りてくる気配がしない。もしかしてドクタードローンだろうかと思いはじめた頃。

今度はピーポー言いながら救急車がやってきた。なるほど、急患をここで受け渡しか、レスキュー車は補助としてやってきたのだろう。それにしても何故にレスキュー車、消防のバンとかでいいんじゃないだろうか。まあそれも事情だろう。

救急車はレスキュー車の後ろに停車した。ドクターヘリから医者らしき人物と数人が飛び出し救急車に駆け寄る。医者らしき人物は救急車に乗り込みしばし静寂が訪れる。やがて救急車から降りた医者らしき人物は、ドクターヘリへと戻っていった。

しかしどうした訳か患者が搬出されない。そうこうしている内にピーポーいいながら救急車が走り去って行った。え？　どういうこと？　ピーポーいってんだから患者乗ってんだよね？　ドクターヘリに乗ってないし。

救急車に続きドクターヘリもバタバタいいながら大空へ消えていった。しかもきた道とは違うとこを通って。あ、空だから道じゃないか。遠回りしてないで真っ直ぐ帰ってはいかがなものか。

最後に何も鳴らさずしずかーーにレスキュー車も走って消えた。ピカピカ棒振るだけの役目だった。自分が見たものは一体何だったのか。レスキュー車と救急車とドクターヘリが一箇所に集まり、10分程度で解散。

患者の乗せ替えも行われず、患者を乗せたピーポーがただ走り去ったのみ。不思議だ、それとも医療関係者にはピンと来る話なのだろうか。自分はさっぱりピンが来ない、こんな事なら顔ピカピカさせてはぁはぁ言いながら「なになになになにっっ」やっとけばよかった。

このことから。
良くない結果と。
良かった結果と。

２つの結果が頭に浮かぶ。
無事だったらいい。
ただの訓練だったらもっといい。

みなさん健康で暮らして下さい。



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